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じゅうはちじょうおつ

十八条乙

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《十八条乙(じゅうはちじょうおつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,127 字 · 26 頁

青空文庫

「すると痕になるのか」

「できるだけのことはやってみるそうです、でも先生はね」とあやは肩をすくめながら忍び笑いをした、「もう結婚していることだし、片輪になるわけではないから、痕ができるくらいどうでもよかろう、それより早く子を生むように心掛けるがいい、ですって」

「暢気なじいさまだ」庄兵衛は笑わなかった、「手の先のことだからな、ひっつれになると困るよ」

五六日はかよって来いと云われたそうで、毎日一度、朝の片づけ物が終ると、あやは女中を供に松屋町へかよった。――こうして、五日めになった日の夜、およそ十一時すぎたころに、伊原友三郎が逃げこんで来た。母はもう眠ったあとで、あやも寝間へはいり、庄兵衛も自分の寝間で夜具にはいったまま、碧巌録の一冊を読んでいた。――窓の戸をそっと叩く音を聞き、外で呼びかける囁き声を聞いて、庄兵衛は起きあがっていった。

「誰かいるのか」と彼は云った。

「入れてくれ、伊原だ」と外で答えた、「伊原友三郎だ、人に知れては困る、静かに、早くたのむ」

「縁側へまわってくれ」

「こっちだったな、わかった」

庄兵衛は寝衣の上へ羽折をひっかけ、襖をあけて居間から縁側へ出ると、端の雨戸をそっと辷らせた。