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ちはやかんのめいろ
千早館の迷路
海野 十三
線上閱讀海野 十三《千早館の迷路(ちはやかんのめいろ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 24,829 字 · 50 頁
無気味な、銃刑場の壁の後の曲が、化け蝙蝠のように暗黒の空間を跳ねまわる。――と、その部屋が、薄桃色の微かな光線で照明されているのが、二人に分った。闇に目が慣れたせいであった。
「どこでしょう、あの音楽を鳴らしているのは……」
春部が声を忍んで、帆村に話しかけた。
「地の底から聞えて来るようですね。あなたは感じませんか、足の裏から振動が匐いあがって来る」
「ええッ……」
春部は愕いて帆村の胴中を両腕で締めた。足が慄えている。
「ふしぎだ。いよいよふしぎだ」
帆村の声が、別人のように皺枯れた。
「えッ、何がふしぎ……」
「さっきあなたも塀の外で見たでしょうが、この建物への電気供給は断たれている。それにも拘らず、ほらあの通り、薄赤い光で照明されており、それから電気蓄音器も鳴っている……」
「あれはこの館の中で演奏しているんじゃないんですの」
春部にとっては、その方が気懸りだった。田川がこれに幽閉されて、あの奏楽を指揮しているのではなかろうか。
「ふしぎだ。この建物の中には暖房設備があって、部屋を温めている。煙突一つ見えず、もちろん煙もあがっていなかったのに。……すると電気暖房かな。