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ちどり
千鳥
鈴木 三重吉
線上閱讀鈴木 三重吉《千鳥(ちどり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 19,951 字 · 41 頁
と涙を啜る。
自分は深い谷底へ一人取残されたような心持がする。藤さんはにわかに荷物を纒めて帰って行ったというのである。その伯父さんというのはだいぶ年の入った、鼻の先に痘痕がちょぼちょぼある人だという。小母さんも初やもいっしょに隣村の埠頭場までついて行ったのだそうである。夕方の船はこの村からは出ないのである。初やは大きな風呂敷包みを背負って行った。も少し先のことだという。その伯父さんは章坊が学校から帰ったらもう来ていたというのである。自分は藤さんの身辺の事情が、いろいろに廻り灯籠の影のように想像の中を廻る。今埠頭場まで駈けつけたら、船はまだ出ないうちかもしれない。隣村の真ん中までは二十町ぐらいはあろうけれど、どこかの百姓馬を飛ばせば訳はない。何だか会って一と言別れがしたいようである。このままでは物足りない。欺されでもしたようにあっけない。駈けつけてみようかしらと思うけれど、考えると、その伴れに来た人間に顔を見られるのが厭である。何だか無性に人相のよくない人間のような気がしてならない。それが怪しげな眼つきをしてじろじろと白眼みでもすると厭である。また船が出た後であっては間抜けている。