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うまいち
午市
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《午市(うまいち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 8,146 字 · 17 頁
小関は、健介の手許を覗き込むようにしながら云う。
「――もうかれこれ九時過ですね」
健介は、胸を反すようにしてゆっくり時計を元の処にしまってから、おせいを顧みた。
「そろそろお暇(いとま)にしようか?」
彼女が何とも云わない先に、主人夫婦は声を励して止めにかかった。
「いいじゃあありませんか、健さんも、どんなに途が遠いったって二時間はかかりますまい?」
しかし、健介も内心では、もうさほどの興味も持っていないらしく見えた。明朝、出勤時間が早いことを理由にして、座を立ちかけていると、突然、ひどい音をたてて誰かが階段を上って来た。
「誰?」
「僕!」
入って来たのは、息子の武雄であった。先刻(さっき)、何か学用品を買いに出て、戻って来たのだろう、突っ立ったまま、
「今夜は午市(うまいち)なんだねえ、随分外は賑やかだよ」
と息を弾ませて報告した。
「おや、そうかえ。ちっとも知らなかった……」
挨拶の中途の、膝をついて息子を見上げていたおふゆは、それで俄に思いついたというように、おせいの方を向いた。
「丁度いい塩梅だ。行って御覧なさいませんか?」
「ああ、そりゃあいい。午市というのはね」