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はんとういっきしょう

半島一奇抄

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《半島一奇抄(はんとういっきしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,324 字 · 27 頁

青空文庫

から。……手前、幼少の頃など、学校を怠けて、船で淡島へ渡って、鳥居前、あの頂辺で弁当を食べるなぞはお茶の子だったものですが、さて、この三津、重寺、口野一帯と来ますと、行軍の扮装でもむずかしい冒険だとしたものでしてな。――沖からこの辺の浦を一目に眺めますと、弁天島に尾を曳いて、二里三里に余る大竜が一条、白浪の鱗、青い巌の膚を横えたように見える、鷲頭山を冠にして、多比の、就中入窪んだあたりは、腕を張って竜が、爪に珠を掴んだ形だと言います。まったく見えますのでな。」

「乗ってるんですね! その上にいま……何だか足が擽ったいようですね。」

記者はシイツに座をずらした。

「いえ、決して、その驚かし申すのではありません。それですから、弁天島の端なり、その……淡島の峯から、こうこの巌山を視めますと、本で見ました、仙境、魔界といった工合で……どんなか、拍子で、この崖に袖の長い女でも居ようものなら、竜宮から買ものに顕われたかと思ったもので。――前途の獅子浜、江の浦までは、大分前に通じましたが、口野からこちら……」

自動車は、既に海に張出した石の欄干を、幾処か、折曲り折曲りして通っていた。