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なんがをかくはなし
南画を描く話
中谷 宇吉郎
線上閱讀中谷 宇吉郎《南画を描く話(なんがをかくはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,968 字 · 24 頁
同時に手紙が来て、戸棚の隅を整理したら、反古にまじってこの絵が出て来たから君にあげると書いてあった。大正八年といえば、丁度先生があの大患でずっと休まれる直前のことであって、胃の工合がもう大分良くなかった頃である。
その前年の秋には『中央公論』に「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」が出ているが、この頃は、時々先生は津田さんのところへ遊びに行かれて、毛筆淡彩の素描などを試みておられたらしい。その時の絵が一枚反古にまぎれ込んだまま二十何年ぶりで見つけ出されたのである。
私は先生の絵は一枚も持っていなかったので、本当に夢かとばかり喜んだ。特にこの絵は非常な傑作で、簡単な素描ながら、その気韻と香りの高さとには心のしずまるものがあった。覗き込んだ細君まで「何だか音が聞えて来るような絵ですね」とわけの分らぬことを言う始末であった。
早速表装をしてもらったら、すっかり新生して、見ちがえるようになった。私は嬉しくてたまらないので、上京の時持って行って、誰れ彼れに見せて廻って、大得意であった。
岩波さんの所へ行った時に、丁度安倍能成さんが見えていたが、この絵を見せたら、「うん、これは寺田さんの生涯の傑作だ。