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らんとうばのてんにょ

卵塔場の天女

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《卵塔場の天女(らんとうばのてんにょ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 47,251 字 · 94 頁

青空文庫

……この雨に樺色の合羽占地茸、一本占地茸。雨は次第に、大分寒い、山から小僧の千本占地茸、にょきりと大松茸は面白い。

私が傘を軒とすれすれに翳して彳んだ処は――こう言出すと、この真剣な話に、背後へ松茸を背負っているようで、巫山戯たらしく見えるから、念のために申して置くが、売もののそれ等は、市の中を――右へ左へ、肩擦れ、足の踏交る、狭い中を縫って歩行いた間に見たので、ちょうど立ったのは、乾物屋の軒下で、四辻をちょっと入った処だった。辻には――ふかし芋も売るから、その湯気と、烏賊を丸焼に醤油の芬々とした香を立てるのと、二条の煙が濃淡あい縺れて雨に靡く中を抜けて来た。

「御免なさいよ。――連が買ものをしてるのを待ってるんですから。」

私と袖を合わせて立った、橘八郎が、ついその番傘の下になる……蜆の剥身の茹ったのを笊に盛って踞っている親仁に言った。――どうも狭いので、傘の雫がほたほたと剥身に落ちて、親仁が苦い顔をして睨み上げたからである。

八郎はこの土地うまれで、十四五年久振りで、勤めのために帰郷する――私の方は京都へ行く用があった。そこで自然誘われて、雪国の都を見物のため、東京から信越線を掛けて大廻りをしたのであった。