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げんしばくだんざつわ
原子爆弾雑話
中谷 宇吉郎
線上閱讀中谷 宇吉郎《原子爆弾雑話(げんしばくだんざつわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,907 字 · 14 頁
少し笑話になるが、我が国でも今度の大戦中、或る方面で原子核崩壊の研究委員会が出来ていた。そこの委員である一人の優秀な物理学者が、関係官庁の要路の人のところまでわざわざ出かけて来て、その研究に必要な資材の入手方の斡旋を乞われた。その時の要求が真鍮棒一本であったという話である。冗談と思われる人もあるかもしれないが、私は自分の体験から考えて、多分それは本当の話であろうと思っている。
いくら日本が資材に乏しいといっても、こういう重要な問題の研究に、真鍮棒一本渡せないはずはない。ないものは真鍮棒ではなくて、一般の科学に対する理解なのである。そしてそれほどまでに科学者以外の人々が科学に無理解であるということは、煎じつめたところ国力の不足に起因するのであろう。
新しい日本の建設は、先ず何よりも国力の充実に始まらねばならない。そして本当に充実した国力からのみ新しい次の時代の日本の科学が産まれるのである。もっともこういう風に言うと、そのようにして産まれた次の時代の日本の科学というものが、今日のものよりも更に強力な新しい原子爆弾の発明を目指しているように誤解されるかもしれない。