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とりかえしものがたり

取返し物語

岡本 かの子

線上閱讀岡本 かの子《取返し物語(とりかえしものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,882 字 · 28 頁

青空文庫

頼む。御主家へ戻って呉れ』

おくみ『わたしゃ、どうあっても嫌じゃわいなあ』

源兵衛『すりゃこれほどに頼んでも』

おくみ『死んでもお傍を離れませぬ』

源兵衛『帰れ』

おくみ『いやじゃ、いやじゃ』

(二人、また揉み合うところに、源右衛門の家の垣の中に声あって)

×××『二人とも争うには及ばぬ。こちへ入れ。直ぐに夫婦にしてやろう』

源兵衛『そういう声は、父者の声』

おさき『親が許して夫婦の盃、御仏前でさすほどに、おくみ坊も早う、こなたへ入るがよいぞや』

(裏の背戸開く)

おくみ『これはまた、どうした運やら。たとえ狐狸の仕業とあっても、わたしゃ悦んで騙されよう。のう源兵衛さま』

(源兵衛の手を取って背戸より入る)

(夜はしらじらと明け、暁の鐘が鳴る)

第三場

(垂幕、湖水の漣に配して唐崎の松の景。朝の渚鳥が鳴いている。

源右衛門と源兵衛旅姿で花道より出で来り、程よきところにて立止まる。)

源右衛門『これ、忰、暫らくの間の故郷の見納め、この辺で一休みするとしようかい』

源兵衛『此の期になって、のんきらしい………。早うこの首うって三井寺へ駆けつけさっしゃれ』(片膝つき右の手で頸を叩く)