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きょうふのきせつ

叢書名著の復興1 恐怖の季節

三好 十郎

線上閱讀三好 十郎《叢書名著の復興1 恐怖の季節(きょうふのきせつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 257,544 字 · 508 頁

青空文庫

中野の小説は、その後のキザに私に見える。

実例を一つだけあげる。「よごれた汽車」の中で「女は五十すぎの年配で、上等でない商売をしていた人のような黒い顔をしていた」と言う句がある。「上等でない商売」というのはインバイかインバイ屋のことではないかと思われる。もしそうなら、なぜそう書かないのだろう? 下品になるからか? いや、そうは思えない。それとも、ただ「低級な」または「あまり儲からない」等の意味だろうか? それなら、これまた、なぜそう書かないのだろう? 小説家なら、「ような」と書いても、その想像力の中で何かのイメージや連想を持っただろうし、持つはずだし、そして持ったのであれば、こんな「手前のところで気取った」表現をとる必要はない。いや、だから、これは表現ではないのだ。表現とは、「あえて、踏み込んで、決定する」ことだからである。

これだけではない。あちらにもこちらにも、この種の表出がある。他の二篇の中にもたくさんある。しかも、これが文章だけのことではない。全体の構成にも、部分々々の切りこみ方にもついてまわる。実にタンネンにシウネクくりかえされるのである。