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きょうふのきせつ

叢書名著の復興1 恐怖の季節

三好 十郎

線上閱讀三好 十郎《叢書名著の復興1 恐怖の季節(きょうふのきせつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 257,544 字 · 508 頁

青空文庫

ていたが、別に火も見えないし。……此処から見下せば平和に眠った町だ。

加多 (地図の研究を終り、今井の言葉尻を小耳に入れて)なに、平和?

今井 いいえ、此処から見れば、そう見えるというのです。もうよろしいか?

加多 ご苦労、もうよい。(今井岩を降りる)そうだ。実は動いている。それを動いていると見るのも動いていないと見るのも距離一つです。幕府の醜吏には醜吏としての距離がある。薩賊会奸には薩賊会奸としての距離がある。

今井 そうです! ところで路はわかりましたか?

加多 わかった。この線がこの路だ。正確なので驚いている。

今井 地図を引いたというその老人はいまどこにいられるんですか?

加多 ああ君はまだだったか。目下、兵藤氏と共に長州の真木和泉のところへ使いに行っている。自ら称して一介の遊侠の徒に過ぎずとしているが胆略ともに実に底の知れない、えらい男です。この地図の様子では洋学の智識などもかなり深いらしい。おっつけ戻る頃だ。

今井 (眼を輝かして)戻って来られれば、いよいよ……?

加多 そんなところだろう。昨年幕府発表の攘夷期五月十日も明らかに空手形に終るは定だし。薩賊会奸何んするものぞ、田丸先生もそういっていられた。