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きょうふのきせつ
叢書名著の復興1 恐怖の季節
三好 十郎
線上閱讀三好 十郎《叢書名著の復興1 恐怖の季節(きょうふのきせつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 257,544 字 · 508 頁
その夫との愛情の成育から結婚に至った生活の中に現に多少でもそれらがあったのであったら、よしんば、それらの一切が既にくずれこわれてしまって、その全体を否定的にしか振り返り得ない回想の中でさえも、それらは浮びあがって来るのが自然だし、浮びあがって来れば、この作品のそれにあたる個所々々に、無意識にさえもそれらの後味がにじみだしてくるのが自然だろう。それが、ほとんど無い。すくなくとも、私には、感じられなかった。伸子と夫との夫婦関係は、主として、ただ、伸子という女が、より大きな人格になるために、どうしても通過しなければならなかった煉獄または修養場のようなものとして設定されているきりである。夫は、ただ、伸子を、よりよいウドンに作りあげるために使われるノシボウみたいに持ち出されているきりだ。実際において、こんな事があったのだろうか? 私にはほとんど信じられない。ほとんど信じられないけれども、やっぱりこんな事があったのだろう。と思う他に、どのように思う手がかりもわれわれには与えられていないから、しかたが無い。とにかく、この伸子の厳酷なエゴイズムと、それを結局において徹底的に是認している作者の態度と、共にブルジョア気質の一特色だと私は思った。