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ふるきミニエチュア
古き小画
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《古き小画(ふるきミニエチュア)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 頁
彼方の地平線は、まるで別なところのように宏大に見える。遠い曠原の一点から、二羽、黒く大きな鳥が舞い立った。そして、迫らない羽搏きで矢のように、真直虹の中心めがけて翔び去った。
ルスタムは、風景全面から、悦ばしい勇気づける印象を与えられた。彼は、昨夜の祈りに対する、暗黙の応えが自然のうちに現わされたのを感じた。まるでイランに冠したようなその虹の姿は、彼に吉徴としか思われなかった。神が自分の側にこのような歓びの前ぶれを与える以上今日の勝利は信じてよく、結局あのツランの若者は、一人の敵に過ぎなかったことではないか。
暫く眺めると、ルスタムは勢いよく天幕に戻った。そして、侍僕に手伝わせ、念入りに武具をつけた。彼は珍しく自分で閲兵した。ギーウに会って昨夜の相談を快活に、――その実行の不要を直感させるような張りのある語調で繰返した。ルスタムは、ツランの若者と戦を交えてから三日目の今朝、始めて自分の裡に眠っていた戦士気質というようなものが遺憾なく目醒、活動し出したのを自覚した。遅疑がなくなった。勝利に向って飽くまで突き進もうという血気が生じた。彼は牽き出されて来た灰色の馬の鼻面を掌でたたき、脚つき蹄鉄等を注意して見てから、身軽くそれに跨った。