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こだいこくごのおんいんについて
古代国語の音韻に就いて 他二篇
橋本 進吉
線上閱讀橋本 進吉《古代国語の音韻に就いて 他二篇(こだいこくごのおんいんについて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 94,329 字 · 188 頁
このf音は西洋諸国語や支那語におけるごとき歯唇音(上歯と下唇との間で発する音)ではなく、今日のフの音の子音に近い両唇音(上唇と下唇との間で発する音)であって、それは更に古い時代のp音から転化したものであろうと考えられているが、奈良時代には多分既にf音になっていたのであり、江戸初期に更にh音に変じたものと思われる。
鳥や獣の声であっても、これを擬した鳴声が普通の語として用いられる場合には、その当時の正常な国語の音として常に用いられる音によって表わされるのが普通である。さすれば、国語の音としてhiのような音がなかった時代においては、馬の鳴声に最も近い音としてはイ以外にないのであるから、これをイの音で摸したのは当然といわなければならない。なおまた後世には「ヒン」というが、ンの音も、古くは外国語、すなわち漢語(または梵語)にはあったけれども、普通の国語の音としてはなかったので、インとはいわず、ただイといったのであろう(蜂の音を今日ではブンというのを、古くブといったのも同じ理由による)。
それでは、馬の鳴声をヒまたはヒンとしたのはいつからであろうか。これについての私の調査はまだ極めて不完全であるが、私が気づいた例の中最も古いのは『落窪物語』