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こてんりゅうとうだび

古典竜頭蛇尾

太宰 治

線上閱讀太宰 治《古典竜頭蛇尾(こてんりゅうとうだび)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 2,603 字 · 6 頁

青空文庫

まさしく、死都である。むかしはここで緑酒を汲んだ。菊の花を眺めた。それを今日の文芸にとりいれて、どうのこうのではなしに、古典は、古典として独自のたのしみがあり、そうして、それだけのものであろう。かぐや姫をレビュウにしたそうであるが、失敗したにちがいない。

日本の古典文学の伝統が、もっとも香気たかくしみ出ているものに、名詞がある。幾百年の永いとしつき、幾百万人の日本の男女の生活を吸いとって、てかてか黒く光っている。これだけは盗めるのである。野は、あかねさすむらさき野。島は、浮島、八十島。浜は、長浜。浦は、生の浦、和歌の浦。寺は、壺坂、笠置、法輪。森は、忍の森、仮寝の森、立聞の森。関は、なこそ、白川。古典ではないが、着物の名称など。黄八丈、蚊がすり、藍みじん、麻の葉、鳴海しぼり。かつて実物を見たことがなくても、それでも、模様が、ありありと眼に浮ぶから不思議である。これをこそ、伝統のちからというのであろう。

すこし調子が出て来たぞと思ったら、もう八枚である。指定の枚数である。ふたたび、現実の重苦しさが襲いかかる。読みかえしてみたら、甚だわけのわからぬことが書かれてある。