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ななしゆびものがたり

名なし指物語

新美 南吉

線上閱讀新美 南吉《名なし指物語(ななしゆびものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N4,點詞查義。

N4 · 入門 · 新字新假名 · 10,312 字 · 21 頁

青空文庫

それから仕事台にこしをおろして、つぎのかたほうをほりはじめました。

マタンは小学校をおえると、木ぐつ師になりたいと思いました。ほんとうは、山の美しいスイスの国へいって、ひつじ飼いになりたいというのがのぞみでしたけれど、かなしいことに、それはあきらめねばなりませんでした。というのは、ひつじ飼いは笛を、うまくふかなきゃならないのだと、少年のマタンは思っていました。ところで、名なし指のないものに、どうしてうまく笛がふけましょう。

マタンが、木ぐつ師になりたいと思ったのにも、わけがありました。それは、ジュリーがおかあさんの木ぐつの古ばかりをはいて、歩きにくそうに、かっこかっこ歩き、すこしいそいだりすると、木ぐつがとんでいってしまうのを、かわいそうに思ったからでした。マタンはじぶんで、ジュリーの足に、ちょうどよい木ぐつを、つくってやろうと考えたのでありました。

村からなんキロも去った、ある川口にのぞんだ大きな町には、りっぱな木ぐつ師が住んでいました。少年のマタンは、その木ぐつ師のところへ、小僧奉公にいったのでありました。

「指が一本ないからには、こいつあ、いい木ぐつ師にゃなれぬかもしれん。