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『わがはいはねこである』じょうへん
吾輩は猫である
線上閱讀夏目 漱石《吾輩は猫である(『わがはいはねこである』じょうへん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 322,123 字 · 643 頁
雪江さんは襖をしめる時に後ろからにやにやと笑った。して見ると女は同年輩でもなかなかえらいものだ。坊主に比すれば遥かに度胸が据わっている。ことに先刻の無念にはらはらと流した一滴の紅涙のあとだから、このにやにやがさらに目立って見えた。
雪江さんの引き込んだあとは、双方無言のまま、しばらくの間は辛防していたが、これでは業をするようなものだと気がついた主人はようやく口を開いた。
「君は何とか云ったけな」
「古井……」
「古井? 古井何とかだね。名は」
「古井武右衛門」
「古井武右衛門――なるほど、だいぶ長い名だな。今の名じゃない、昔の名だ。四年生だったね」
「いいえ」
「三年生か?」
「いいえ、二年生です」
「甲の組かね」
「乙です」
「乙なら、わたしの監督だね。そうか」と主人は感心している。実はこの大頭は入学の当時から、主人の眼についているんだから、決して忘れるどころではない。のみならず、時々は夢に見るくらい感銘した頭である。しかし呑気な主人はこの頭とこの古風な姓名とを連結して、その連結したものをまた二年乙組に連結する事が出来なかったのである。だからこの夢に見るほど感心した頭が自分の監督組の生徒であると聞いて、思わずそうかと心の裏で手を拍ったのである。