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うたのたてやましんじゅういっきょく

唄立山心中一曲

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《唄立山心中一曲(うたのたてやましんじゅういっきょく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 30,835 字 · 61 頁

青空文庫

何となく容子が四辺を沈めて、陰気だけれど、気高いんでございますよ。

同じ人間もな……鑄掛屋を一人土間で飲らして、納戸の炬燵に潜込んだ、一ぜん飯の婆々媽々などと言う徒は、お道さんの(今晩は。)にただ、(ふわ、)と言ったきりだ。顔も出さねえ。その(ふわ、)がね、何の事アねえ、鼠の穴から古綿が千断れて出たようだ。」

「ちと耳が疼いだな。」

と饂飩屋の女房が口を入れた、――女房は鋳掛屋の話に引かれて、二階の座に加わっていたのである。

「そのかわり大まかなものだよ。店の客人が、飲さしの二合壜と、もう一本、棚より引攫って、こいつを、丼へ突込んで、しばらくして、婦人たちのあとを追ってぶらりと出て行くのに、何とも言わねえ。山は深い、旦那方のおっしゃる、それ、何とかって、山中暦日なしじゃあねえ、狼温泉なんざ、いつもお正月で、人間がめでてえね。」

「ははあ。」

「成程。」

私たちは、そんな事は徒に聞いて、さきを急いだ。

「荷はどうしたよ。」

と女房が笑って言った。

「ほい忘れた。いや、忘れたんじゃあねえ、一ぜん飯に置放しよ。」

「それ見たか、あんな三味線だって、壜詰二升ぐらいな値はあるでござんさあ、なあ、旦那方。