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うたのたてやましんじゅういっきょく

唄立山心中一曲

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《唄立山心中一曲(うたのたてやましんじゅういっきょく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 30,835 字 · 61 頁

青空文庫

)――

晩の泊はどこだって聞きますから、向うの峰の日脚を仰向いて、下の温泉だと云いますとね、双葉屋の女中だと、ここで姉さんが名を言って、お世話しましょうと、きつい発奮さ。

御旅館などは勿体ねえ、こちとら式がと木賃がると、今頃はからあきで、人気がなくって寂しいくらい。でも、お一方――一昨日から、上州高崎の方だそうだけれど、東京にも少かろう、品のいい美しい、お嬢さんだか、夫人だか、少い方がお一方……」

「お一方?」

と、うっかり訊いて私は膝を堅うした。――小村さんも同じ思いは疑いない。――あの時、その窈窕たる御寮が、汽車を棄てたのは、かしこで、その高崎であった。

「さようで。――お一方御逗留、おさみしそうなその方にも、いまの立山が聞かせたいと、何となくそのお一方が、もっての外気になるようで、妙に眉のあたりを暗くしましたっけ、熟と日のかげる山を視めたが、

(ああ。鋳掛屋さん。)

と慌しい。……皆まで聞かずと飲込んだ、旦那様帰り引と……ここらは鵜だてね、天幕の逢目をひょこりと出た。もとの山端へ引退り、さらば一服仕ろう……つぎ置の茶の中には、松の落葉と朱葉が一枚。