輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
ぜんぞうをおもう
善蔵を思う
線上閱讀太宰 治《善蔵を思う(ぜんぞうをおもう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,041 字 · 29 頁
」この友人の右の眼の下には、あずき粒くらいの大きな泣きぼくろが在るのだ。
私は、そんないい加減の言葉では、なぐさめられ切れず、鬱然として顔を仰向け、煙草ばかり吸っていた。
その時である。友人は、私の庭の八本の薔薇に眼をつけ、意外の事実を知らせてくれた。これは、なかなか優秀の薔薇だ、と言うのだ。
「ほんとうかね。」
「そうらしい。これは、もう六年くらいは経っています。ばら新あたりでは、一本一円以上は取るね。」友人は、薔薇に就いては苦労して来たひとである。大久保の自宅の、狭い庭に、四、五十本の薔薇を植えている。
「でも、これを売りに来た女は、贋物だったんだぜ。」と私は、瞞された顛末を早速、物語って聞かせた。
「商人というものは、不必要な嘘まで吐くやつさ。どうでも、買ってもらいたかったんだろう。奥さん、鋏を貸して下さい。」友人は庭へ降りて、薔薇のむだな枝を、熱心にぱちんぱちんと剪み取ってくれている。
「同郷人だったのかな? あの女は。」なぜだか、頬が熱くなった。「まんざら、嘘つきでも無いじゃないか。」
私は縁側に腰かけ、煙草を吸って、ひとかたならず満足であった。