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よんじゅうはちにんめ

四十八人目

森田 草平

線上閱讀森田 草平《四十八人目(よんじゅうはちにんめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 56,183 字 · 112 頁

青空文庫

「そうか、よし通れ!」

小平太はまず虎口を免れたような気がした。が、ここでひとつ落着いたところを見せておこうと、

「私は新参者でよく存じませぬが、小林様のお長屋はどちらでございましょう?」と訊いてみた。

「なに、初めて御当家へ参ったと申すか」と、足軽はやっと手に持った網から顔を上げた。「小林様はお玄関の前を左に折れて、中の塀についてお長屋の前を真直に行くと、一番奥の一軒建ちがそれだ」

「へえ、どうもありがとうございます。こちらへ参りますか、は、分りました」と、お叩頭をしいしい、わざとゆっくり足を運んで、遠目に玄関口を覗いてみると、正面に舞楽の絵をかいた大きな衝立が立ててあるばかりで、ひっそり閑と鎮まり返っていた。が、ここらで見咎められてはならぬと思うから、言われたとおりに、すぐに左へ折れて、総長屋の前をぶらりぶらりと歩いて行った。長屋にはところどころ人声がして、どこからともなく水を汲む音、夕餉の支度をするらしい物音が聞えてきた。が、どちらを見ても、別段目に立つような異状はない。大竹の矢来といったような厳重な設備は、少なくともそのへんには見受けられなかった。