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よっかのあやめ

四日のあやめ

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《四日のあやめ(よっかのあやめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 19,200 字 · 38 頁

青空文庫

主税介は黙って聞いていた。

――馬廻りでは誰と誰がいたか。

重三郎にそう訊きたかった。重三郎は始末の終るまで見ていたというから、そこにいた者の名をあげることができるだろう。「深松はいたか、唐沢は、井上十蔵は、池上は、羽形は、――」なんどもそう訊きかけたが、やがてわかることだと思って辛抱した。

「猪狩りを控えての騒動だから、重科はまぬかれまいな」浦原彦馬が云った、「せめてお狩りのあとにすればよかったのに、こらえ性のない連中にも困ったものだ」

「男と男の喧嘩はそういうものですよ」重三郎が云った、「長いあいだくすぶっていたことだし、ぶっつかる時が来れば利も不利もない、義理も恩愛もなげうって対決したんですから、いかにも三河武士らしくていいと思いますね」

語気が激しかったので彦馬は、渋い顔をした。主税介にもその調子が異様に感じられた。自分が決闘に出なかったことを責めているのではないか、とさえ思った。――老職連署の触書が廻ったことを話したので、三人はまもなく帰った。千世は兄に残ってもらいたかった、自分の今朝したことを話して、兄の意見を聞きたいと思ったのであるが、重三郎は妹に話しかける隙を与えず、他の二人といっしょに帰っていった。