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あかげっと しなあちこち
国枝史郎歴史小説傑作選
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《国枝史郎歴史小説傑作選(あかげっと しなあちこち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 59,334 字 · 121 頁
又、その外交官は、――今の僕には記憶はないが、何か重大な使命を持った人物だったかもしれない。
それに、第一、それだけの筋では、探偵小説にはならない(その『外交綺談』は、探偵小説集なのであった)
それにもかかわらず、この物語が、三十年以上も、僕のアタマにつき纏っていて、何か小説でも書こうとすると、きっと、アタマの隅へ浮んでくる。
何故だろう?
そんなに、僕の創作の圏内へ顔を出す物語なら、その著書をもう一度手に入れて、読返しもっとハッキリとその筋を掴んだらよいではないか!
ところが、幾度となく、その『外交綺談』を、神田辺の古本屋や、夜店の見切物の古本屋で見かけるのであるが、買おうともせず、読返そうともしない。
何故だろう?
思うに、これは、少年時代に楽しく経験した、遊戯や、風景や、初恋などを、大人になってから、もう一度経験することによって、幻滅することを恐れるあの心理と似ているのであろう。
さて、これはこれでよいとして、こう書いて来た順序として何か尤もらしいことを云って、この茶話のしめくくりをつけたいものだ。
こんなことを云おう。――
「外交官などというものは、天下国家に関する、重大なことばかりに、日夜、アタマを使っていて、案外、こまかいことには不注意らしい。