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『つち』について

『土』に就て

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《『土』に就て(『つち』について)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,185 字 · 9 頁

青空文庫

苦しいから読めというのだと告げたいと思って居る。参考の為だから、世間を知る為だから、知って己れの人格の上に暗い恐ろしい影を反射させる為だから我慢して読めと忠告したいと思って居る。何も考えずに暖かく成長した若い女(男でも同じである)の起す菩提心や宗教心は、皆此暗い影の奥から射して来るのだと余は固く信じて居るからである。

長塚君の書き方は何処迄も沈着である。其人物は皆有の儘である。話の筋は全く自然である。余が「土」を「朝日」に載せ始めた時、北の方のSという人がわざわざ書を余のもとに寄せて、長塚君が旅行して彼と面会した折の議論を報じた事がある。長塚君は余の「朝日」に書いた「満韓ところどころ」というものをSの所で一回読んで、漱石という男は人を馬鹿にして居るといって大いに憤慨したそうである。漱石に限らず一体「朝日新聞」の記者の書き振りは皆人を馬鹿にして居ると云って罵ったそうである。成程真面目に老成した、殆んど厳粛という文字を以て形容して然るべき「土」を書いた、長塚君としては尤もの事である。「満韓ところどころ」抔が君の気色を害したのは左もあるべきだと思う。然し君から軽佻の疑を受けた余にも、真面目な「土」