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もぐらとらくばん

土鼠と落盤

黒島 伝治

線上閱讀黒島 伝治《土鼠と落盤(もぐらとらくばん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,823 字 · 36 頁

青空文庫

彼は、それを見つけた。急に心臓がドキドキ鳴りだした。彼は、それを押えながら、石がボロボロころげて来る斜坑を這い上った。

六百尺の、エジプトのスフィンクスの洞窟のような廃坑に、彼女は幽霊のように白い顔で立っていた。

彼は、差し出したカンテラが、彼女にぶつかりそうになって、始めてそれに気がついた。水のしずくが、足もとにポツ/\落ちていた。カンテラの火がハタ/\ゆれた。

彼は、恋のへちまのと、べちゃくちゃ喋るのが面倒だった。カンテラを突き出た岩に引っかけると、いきなり無言で、彼女をたくましい腕×××××。

「話ってなアに?」

「これがあの、ひげのあいつに喰われようとしとった、その女だ!」

カンテラに薄く照し出された女の顔をま近に見ながら彼は考えた。そして腕に力を入れた。女のあつい息が、顔にかゝった。

「つまんない!」彼女はそんな眼をした。

しかし、敏捷に、割に小さい、土のついた両手を拡げると、彼の頸×××××いた。

「タエ!」

彼は、たゞ一言云ったゞけだ。つる/\した、卵のぬき身のような肌を、井村は自分の皮膚に感じた。

それから、彼等は、たび/\別々な道から六百尺へ這い上って行きだした。