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ちじょう
地上
島田 清次郎
線上閱讀島田 清次郎《地上(ちじょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 頁
ああ、その瞳はこの時がはじめての瞳ではなかった。それは平一郎がまだ小学校の六年生の時であった。毎朝の朝礼式の行なわれる控室の正面に前年度の卒業生が一丈余りも丈のある大鏡を寄付していったのであるが、級長である平一郎は朝礼の時にはいつも列の一番前に並んでいた。ある朝、ふと眼をあげて大鏡の面を見ると、実にはっきりと、今燃え立ち襲って来ている瞳が写っていたのだ! 初めは幻覚かと思ったが、しかし和歌子も六年の女の組の級長なので、一番列の前にいる筈であった。和歌子に相違なかった。彼は威厳を含んだ秀麗な和歌子の鏡面のすがたを視つめていた。自分の立っている所から彼女の姿が見えるように、自分の姿も彼女のところから見えるに相違ない。こう彼は思って鏡面を視つめていた。奇蹟であった。じっと威厳を保っていた和歌子の映像が笑ったのだ! ああ、毎朝の鏡面を仲立ちにしての二人の対面よ! 毎朝、鏡面で互いににっこり笑み合うことがいかに幼い頃の悦びであったろうか――その忘れがたい瞳が、今力強く彼を襲って来ているのだった。彼はその瞳が何を語るかを、全身をもって感じていた。全身が火焔を吹くように感じられた。