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『ちきゅうとうなん』のさくしゃのことば

『地球盗難』の作者の言葉

海野 十三

線上閱讀海野 十三《『地球盗難』の作者の言葉(『ちきゅうとうなん』のさくしゃのことば)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 5,196 字 · 11 頁

青空文庫

などの科学小説がその頃現れ、読者の血を湧したことは厳然たる事実であって、押川春浪氏の名をわが科学小説史の上に落とすことは出来ない。

それからこの方、誰が科学小説を書いたであろうか。僕の識る範囲では、野村胡堂氏、三津木春影氏、松山思水氏などが、少数の科学小説またはそれらしいものを書いた。しかしそれ等は、不幸にして読書界に多くの反響を呼びおこさなかったようである。一方ウェルズやベルヌの翻訳ものが出て、いささか淡い色をつけてくれたに過ぎない。

その奮わぬ科学小説時代は、遂に今日にまで及んでいるといって差支えない。過去に於て、科学小説の奮わなかったことは、肯けないことではない。一般読者階級には、科学小説に興味をもつ者も少く、科学を理解する者の頭から純然とひねりだされた科学小説もなく、そしてまた科学者たちは本来の科学研究を行うのに寧日なく、自己の科学趣味や科学報恩の意志を延長して科学小説にまで手を伸ばそうという人は皆無だった。

ところが今や世はあげて、科学隆興時代となり、生活は科学の恩恵によって目まぐるしいまでに便利なものとなり、科学によって生活程度は急激なる進歩をもたらし、科学に従事し、科学に趣味をもつ者はまた非常に多くなってきた。