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きょうかいなきさべつ

境界なき差別

丘 浅次郎

線上閱讀丘 浅次郎《境界なき差別(きょうかいなきさべつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 8,992 字 · 18 頁

青空文庫

濃い葛湯が凝って葛餅となる間には、今までは液体、今からが固形体というように、その境界を示し得べき時刻はけっしてない。

さらに例をとってみるに、醒めているときは意識があるといい、眠っているときは意識がないというが、これもその間に判然たる境界はない。朝目覚めるときも、夜寝入るときも、無意識から有意識へ、もしくは有意識から無意識へと移り行く間には実に無数の半意識的状態を経過するから、その有様は夜が明けて朝となり、日が暮れて夜になるのと、少しも違わぬ。賢愚の別も、そのとおりで、賢人と愚物とを比較すれば、その間の差別はまことに明瞭であるが、その中間には賢七愚三とか、賢四愚六とか賢愚五分五分とかいうような種々な程度の人間が限りなくあるゆえ、とうてい明瞭な境界線を定めることはできぬ。健康と病気とか老と若とか、新と旧とか、大と小とか、軽と重とかいうように相対する名称の付けてある事柄は、いずれも両端を比較するとその差別は明らかであるにかかわらず、その間に境界線を付けられぬものばかりである。

学問や芸術の区別にも同様なことがある。動物と植物との境界がない以上は、これを研究する動物学と植物学との間にはもとより境はない。