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ぼちてんぼうてい

墓地展望亭

久生 十蘭

線上閱讀久生 十蘭《墓地展望亭(ぼちてんぼうてい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 46,485 字 · 93 頁

青空文庫

国境駅の検閲にしては、いささか、物々しすぎるおもむきだった。

竜太郎は、旅行免状を差し出した。コレンコ風の、短い口髭を生やした、年嵩の士官は、旅行免状をチラと一瞥しただけでおし返し、近東のつよい訛のある英語で、たずねた。

「どういう、用件で?」

竜太郎は答えなかった。今度は、仏蘭西語でたずねた。

「リストリアへ、……どういう、用向きで」

鋭い眼が、まともに竜太郎の眼を瞶めていた。質問というより、訊問というのにちかかった。

「語学の勉強に」

この返答は、たしかに士官の度胆を抜いたらしかった。が、依然として辛辣な表情をかえずに、

「語学の勉強? 確実に?」

「確実に」

「語学の勉強には、少々、不適当な時期ですな」

士官の表情に、露骨に、不審をあらわしていた。

「マナイールまでおいでですか」

竜太郎の背筋を、小さな戦慄が走った。

この国境の近くで、何か重大なことが起りかけている。じぶんの返答ひとつで、予測し難い危険が身に迫るらしかった。咄嗟に、どう答えていいのか、判断がつかなかった。

ふと思いついて、ダンピエール先生からもらった紹介状をとり出して、食卓の上へおいた。