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かべのめのかい

壁の眼の怪

江見 水蔭

線上閱讀江見 水蔭《壁の眼の怪(かべのめのかい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,253 字 · 15 頁

青空文庫

濡れた腰巻のまま、岸に置いた衣類を引抱えて後をも見ずに走り出した。子供達も皆同じように逃げ出して、忽ち人の影は見えなくなった。

直芳は茫然としてそこにいた。幻影が無惨にも破れたのであった。

二

その間に川向うには三面の里人が、異様な風俗で多数現われた。不意に異人種が襲来して来たように、敵意を含んで見るらしかった。いくら呼んでも丸木船が有りながら、それを出してはくれなかった。そこで、漸く発見した浅瀬を銘々徒渉する事になった。

「立騒ぐには及ばぬ。我等は決して敵意ある者ではない。薬草採りに参ったのじゃ」

漸く里人に納得さして、村一番の長者小池大炊之助の家へと案内させた。

大炊之助は池大納言三十二代の後裔だというのであった。平家の落武者がこの里に隠れ住む事歳久しく、全く他郷との行通を絶って、桃源武陵の生活をしていたのだけれど、たまたま三面川に椀を流したのから、下流の里人に発見されたという、そうした伝説が有るのであった。

鷲ヶ巣山、光鷺山、伊東岳、泥股山などの大山高岳に取囲まれて、全くの別世界。家の建築も非常に変っていて、六月というに未だ雪避けの萱莚が、屋上から垂れていて、陰気臭さと云ったらないのであった。