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かわったはなし
変った話
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《変った話(かわったはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 8,474 字 · 17 頁
富士山の上に天井があるのは嘘だろうと思ったのであった。
二十年の学校生活に暇乞をしてから以来、何かの機会に『老子』というものも一遍は覗いてみたいと思い立ったことは何度もあった。その度ごとに本屋の書架から手頃らしいと思われる註釈本を物色しては買って来て読みかけるのであるが、第一本文が無闇に六かしい上にその註釈なるものが、どれも大抵は何となく黴臭い雰囲気の中を手捜りで連れて行かれるような感じのするものであった。それらの書物を通して見た老子は妙にじじむさいばかりか、何となく偽善者らしい勿体ぶった顔をしていて、どうも親しみを感ずる訳には行かないので、ついついおしまいまで通読する機会がなく、従って老子に関する概念さえなしにこの年月を過ごして来たのであった。
つい近頃本屋の棚で薄っぺらな「インゼル・ビュフェライ叢書」をひやかしていたら、アレクサンダー・ウラールという人の『老子』というのが出て来た。たった七十一頁の小冊子である。値段が安いのと表紙の色刷の模様が面白いのとで何の気なしにそれを買って電車に乗った。そうしてところどころをあけて読んでみるとなかなか面白いことが書いてあって、それが実によくわかる。