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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
線上閱讀原 民喜《夏の花・心願の国(なつのはな)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,816 字 · 310 頁
何処か田舎へ家を借りて家財だけでも運んでおきたい、そんな相談なら前から妻としていた。だが、田舎の何処にそんな家がみつかるのか、清二にはまるであてがなかった。この頃になると、清二は長兄の行動をかれこれ、あてこすらないかわりに、じっと怨めしげに、ひとり考えこむのであった。
順一もしかし清二の一家を見捨ててはおけなくなった。結局、順一の肝煎で、田舎へ一軒、家を借りることが出来た。が、荷を運ぶ馬車はすぐには傭えなかった。田舎へ家が見つかったとなると、清二は吻として、荷造に忙殺されていた。すると、三次の方の集団疎開地の先生から、父兄の面会日を通知して来た。三次の方へ訪ねて行くとなれば、冬物一切を持って行ってやりたいし、疎開の荷造やら、学童へ持って行ってやる品の準備で、家のうちはまたごったかえした。それに清二は妙な癖があって、学童へ持って行ってやる品々には、きちんと毛筆で名前を記入しておいてやらぬと気が済まないのだった。
あれをかたづけたり、これをとりちらかしたりした挙句、夕方になると清二はふいと気をかえて、釣竿を持って、すぐ前の川原に出た。この頃あまり釣れないのであるが、糸を垂れていると、一番気が落着くようであった。