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なつくさせんき

夏草戦記

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《夏草戦記(なつくさせんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,107 字 · 41 頁

青空文庫

と源七を眼で招きながら、ふところから先刻の紙片をとりだした。

「これは密書だな」源七はひらいて見て眼をみはった、「では内通者をつきとめたのか」

「つきとめた、それをよく見てくれ、此処から天王山までの道筋と宿営する場所が書いてある、朱を入れてあるのがそうだ、つまり宿営地は敵がきめていた、われわれは敵がきめた場所へ陣泊りをしていたんだ、これでは夜がけは思うままだし、むしろ損害の少なかったのがふしぎなくらいだ」

「なに者なんだ、その内通者は誰だ」

「それは云えない、いずれはわかるだろうがおれの口からは云えない、だが心配しなくてもいい、そいつはおれが斬った」

そう云ってかれは自分の右手をじっと見た、源七はいろいろな感情がつきあげてきて、しばらくはなにも云えなかった。いま眼の前にいる友は間もなく死罪になるのだ、おなじ故郷に生れおなじ風雪のなかで育ってきた、いくたび共に戦塵を浴びたことだろう、いくたびいっしょに生死の境をくぐったことだろう、その友がいま首の座に直ろうとしている、しかもその罪は罪と呼ぶことのできぬものだ、むしろ全隊士の生命を危険から救った功名でさえある、これをむざむざ死罪にしていいだろうか、