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やこうちゅう

夜光虫

織田 作之助

線上閱讀織田 作之助《夜光虫(やこうちゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 66,871 字 · 134 頁

青空文庫

ところが、あてもなく闇市場を歩いていると、パンを売っているばかりか、食堂の飾窓にはカレーライスの見本もも出ているではないか。

小沢はいそいそと中へはいったのだ。

「カレーライス出来る……?」

「出来ます」

「ライス……って米なの……?」

「純綿です」

「純綿……?」

と、きき返したが、

「――ア、そうか。白米か」

と、すぐ判った。

値をきくと、十五円だという。

「高い!」

と、思う前に、小沢はとにかく外で米の飯が食えるという意外な発見に、気持が浮き立っていた。

十五円という金がこの国の勤労階級の収入の、殆ど一日分――いや、それ以上の大金だということには、小沢は暫らく気がつかなかった。

その食堂に、どうして白米があるのか、毎日何百杯かのカレーライスを売るだけの米があるのか――ということも、考えなかった。

ただ、米があるということに安心していた。

「大阪へ帰れば、米は食えないぞとおどかしやがったが、なんのことだ、ちゃんとこうして、あるじゃないか」

食糧危機だなんて言葉は嘘なんだな――と思いながら、運ばれて来たカレーライスを食べていると、黝ぐろいむくみがむくんで、水が引いたように痩せおとろえた十六、七の薄汚い少女が、垢と泥が蘚苔のようにへばりついている跣足のまま、フラフラとはいって来た。