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よながひめとみみお

夜長姫と耳男

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《夜長姫と耳男(よながひめとみみお)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 27,604 字 · 56 頁

青空文庫

オレは片手と片足で、欄間のホリモノをきざまなければならなかった。骨折の怪我というものは、夜も眠ることができないほど痛むものだ。オレは泣き泣きノミをふるッていたが、泣き泣き眠ることができない長夜の苦しみよりも、泣き泣き仕事する日中の凌ぎよいことが分ってきた。折からの満月を幸いに、夜中に起きてノミをふるい、痛さに堪えかねて悶え泣いたこともあったし、手をすべらせてモモにノミを突きたててしまったこともあったが、苦しみに超えたものは仕事だけだということを、あの時ほどマザ/\と思い知らされたことはない。片手片足でほった欄間だが、両手両足が使えるようになってから眺め直して、特に手を入れる必要もなかった。

その時のことが身にしみているから、片耳を斬り落された痛みぐらいは、仕事の励みになっただけだ。今に思い知らせてやるぞと考えた。そして、いやが上にも怖ろしい魔神の姿を思いめぐらしてゾクゾクしたが、思い知らせてやるのがこの女だとは考えたことがなかったようだ。

「オレが女を咒わないのは、ワケが分るフシもあるような気がするが、女がオレを仇のように憎むのはワケが分らない。ひょッとすると、長者があんなことを云ったから、オレが女をほしがっていると思って咒っているのかも知れないな」