輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

ゆめどのさつじんじけん

夢殿殺人事件

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《夢殿殺人事件(ゆめどのさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 27,755 字 · 55 頁

青空文庫

所が、その画像を見詰めながら、法水が一足閾を跨いだとき、右手にある階段の上り口に、それは異様なものが突っ立っているのに気が付いた。その薄ら茫やりとした暗がりの中には、地図のような血痕の附いた行衣を着て、一人の僧形をした男が直立している。そして、その男は、両手をキチンと腰につけたまま膝をついていて、正面に烱々たる眼光を放っているのだ。然し、眼が暗さに慣れるにつれて、更に驚くべきものを見た、と云うのは、その男の両足は、膝蓋骨から三寸ほど下の所で切断されていて、その木脚のような二本の擂木が、壁に背を凭せ全身を支えて突っ立っているのだった。「これが推摩居士なので御座います」と、この凄惨な場面に適わしからぬような、恍とりとした声で、盤得尼が云った。ああ、なんと皮肉な事であろうか、殺された当の人物と云うのが、奇蹟行者だったのだ。「所が、正午頃夢殿に入られてから発見される一時十五分迄の間と云うものは、一向に何んの物音もなく、それに、嗄れ声一つ聴こえませんのでしたが……」

推摩居士の年齢は略々盤得尼と頃合だけれども、その相貌からうける印象と云えば、まず悉くが、打算と利慾の中で呼吸している、常人以外のものではなかった。