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だいどうじしんすけのはんせい
大導寺信輔の半生
線上閱讀芥川 竜之介《大導寺信輔の半生(だいどうじしんすけのはんせい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,611 字 · 26 頁
彼はそれ等の戦場に彼の友だちを打ち倒したり、彼の友だちに打ち倒されたりした。この精神的格闘は何よりも殺戮の歓喜の為に行われたものに違いなかった。しかしおのずからその間に新しい観念や新しい美の姿を現したことも事実だった。如何に午前三時の蝋燭の炎は彼等の論戦を照らしていたか、如何に又武者小路実篤の作品は彼等の論戦を支配していたか、――信輔は鮮かに九月の或夜、何匹も蝋燭へ集って来た、大きい灯取虫を覚えている。灯取虫は深い闇の中から突然きらびやかに生まれて来た。が、炎に触れるが早いか、嘘のようにぱたぱたと死んで行った。これは何も今更のように珍しがる価のないことかも知れない。しかし信輔は今日もなおこの小事件を思い出す度に、――この不思議に美しい灯取虫の生死を思い出す度に、なぜか彼の心の底に多少の寂しさを感ずるのである。………
信輔は才能の多少を問わずに友だちを作ることは出来なかった。標準は只それだけだった。しかしやはりこの標準にも全然例外のない訣ではなかった。それは彼の友だちと彼との間を截断する社会的階級の差別だった。信輔は彼と育ちの似寄った中流階級の青年には何のこだわりも感じなかった。