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おおとりものせんにんつぼ
大捕物仙人壺
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《大捕物仙人壺(おおとりものせんにんつぼ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 頁
「ふうむ、それで、厭とおっしゃるか」さも案外だと云うように、
「しかし、それでは卑怯でござるぞ」
「負けると知って剣を合わせ、万一の僥倖を期する者こそ、即ち卑怯と申すもの。拙者はそれとは反対でござる」
「なるほど」と浪士はそれを聞くと、どうやら感心したらしかった。「と申してこのままお帰ししては、秘密の洩れるおそれがある。いよいよお立合い下さらぬとあっては、お気の毒ながら一刀の下に……」
「よろしゅうござる、お斬りなされ」
いよいよ不可ないと知ってからは、却って捨身の度胸が定まり、義哉の心は澄み返った。そこで、膝へ両手を重ね、頸をグイと前へ延ばした。
それと見てとると例の浪士は、やおら立ち上って太刀を抜いたが、「神妙のお覚悟感じ入ってござる、何か遺言はござらぬかな」
「左様」と云って首をかしげたが「ちょっと三味線をお貸し下され」
ここに至って浪士どもは、唖然たらざるを得なかった。
「何になさるな?」と例の浪士が訊いた。
「中途で弾き止めた清元の『山姥』、今生の思い出に了えとうござる」
「ははあ」と云うと例の浪士は、仲間の者と眼を見合わせたが、やがて頤で合図をした。