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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 頁

青空文庫

「ええ、煙硝の煙で、お目を悪くしてしまったのだそうですよ」

「それはいけません」

「どういうわけですか、わたしもよくは聞きませんでした」

二人がボツリボツリとこんな問答をしている間も、席を外した後家さんは戻って来ません。いったい、どこへ何しに行ったのだ。お雪もようやくもどかしくなりました。

「どうしたんでしょう、おばさん帰りが遅いですね、わたし、お暇致しましょう」

お雪も、若い男と二人さしむかいでは気が置けると見えて、帰ろうとすると、

「まあ、いいじゃございませんか、お話しなさいまし、もうすぐ帰りますよ」

「それでも……では出直して参りましょう」

「いいえ、よろしうございますよ。それからお嬢さん、まだ本がいくらもございますから、お持ち下さいまし」

「そうですか、それではあとでお借り申しに上りましょう、御免下さいまし」

と、そこそこにお暇乞いをしてお雪は帰りますと、まもなく、自分の廊下のところに立ち止まりました。

その中でヒソヒソと話し声が聞えたからです。はて、久助さんは下で煙草切りをしているはず。あとは先生一人でいたはず。そこでヒソヒソと話し声がしたものですから、お雪が足をとどめたのも無理はありません。