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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 頁

青空文庫

これが岡本兵部の娘なのか。

娘は泣きながら両袖を合わせて、抱えたものをいよいよ大事にし、

「ねえ、あなた、茂太郎はどこへ行きましたろう……鋸山の上にもいませんでしたわ」

「そのうち帰るでしょう」

「そうか知ら、帰るかしら、いつまで待ったら帰るでしょう」

ねんねんねんねん

ねんねんよ

ねんねのお守は

どこへいた

お山を越えて

里越えて

そうしてお家へ

いつ帰るの……

女は蝋涙のような涙を袖でふいて、

「ねえ、あなた、この子の面が茂太郎によく似ているでしょう、そっくりだと思わない?」

といって、今まで後生大事に胸にかかえていたものを、両手に捧げて白雲の机の上に置きました。それは石の羅漢の首ばかりです。

「うむ」

白雲が挨拶に苦しんでいると、

「似ているでしょう。もし似ていると思ったら、それを描いて頂戴な……」

十

田山白雲は保田を立つ時、予期しなかった二つの獲物を画嚢に入れて立ちました。

仇英の回錦図巻と狂女の絵。その二つを頭の中で組み合わせながら、再び白雲は旅にのぼったものです。

下谷の長者町の道庵先生が、かねての志望によって、中仙道筋を京大阪へ向けて出立したのも、ちょうどその時分のことでありました。