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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 頁

青空文庫

「まあ、芝居だから……」

「芝居とはいえ海老蔵ともあるべき者が、弁慶をやるに全くその心がけを忘れている、自分一人だけを見せる芝居をやるというのは、あるべからざることだ、弁慶だけが浮いて、ほかの人物はちっとも浮いて来ないじゃないか……その弁慶も、本当の弁慶じゃない、作り物の弁慶だ」

仏頂寺がこういって力み出した地声が、少し高過ぎたせいでしょう、

「叱ッ」

という声が聞えると、

「なにッ」

と仏頂寺がムキになりました。それを丸山が袖をひかえて、

「まあ、芝居狂言だから……」

仏頂寺弥助も、やむなく沈黙しました。

その時分、舞台では海土蔵の弁慶がますます発揮し、富樫の施物を受取って、一同この関を通り抜けようとする。

「いかにそれなる強力、とまれとこそ」

義経に似たという強力が呼びとめられたのを、弁慶が怒って、金剛杖を取って散々に打ちのめす――それまでは、どうやら無事。かくて関所を出ると、山伏を先へやって弁慶一人が悠々と歩み出す。ここからが変だと思いました。

そこで、富樫が引込むと、「ついに泣かぬ弁慶も一期の涙ぞ殊勝なる」から「判官御手を取り給い」の順序になるべきはずのところを、判官を初め、四天王残らずの山伏と、強力が、ずんずん舞台を引込んでしまい、あとは弁慶一人舞台。