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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 頁
エド蔵だ。本物の市川海老蔵という役者は、市川総本家の大将で、芝居道の方では王様だ。こいつは擬物のエド蔵。諸君、だまされてはいけない」
持って来た番付を押開いて、高く掲げて看客に警告したのは大いに利き目があって、すべての看客がおのおの携帯の番付を照らし合わせて見ると、なるほど、老と土の違いがある。老と土とは、つまりエビ蔵をエド蔵にする。なるほどと合点したところへ畳みかけて仏頂寺が、
「おのおの方……芝居を見るにも、裏と表を透して見なければいかん、ただ、逆せ上ってわいわい見ていてはいけない。この弁慶が……この弁慶なる者が、一人で舞台の上をのさばり廻っているところのみを見て、弁慶というもののその時の心持を見ないような奴は、芝居を見ないがよろしい。さいぜんも見ていれば、富樫に咎められて、金剛杖で主人義経を打ち据える時の、あの打据え様はどうだ。苟くも弁慶ほどの者が、主たるものの身体に鞭を当てねばならぬ心中の苦痛はいかばかり……外目には強く打つと見せて、腹の中は血の涙で煮え返る、その心の中は千万無量だ。それをこの弁慶は、ここにいる弁慶なるものは、ただもういい心持でブン擲って、俺はこれほど強いぞ、といわぬばかりの下司根性、見てはいられぬ――市川宗家の名優ともあるべき者が、こんな、くだらない弁慶を見せられるか」