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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 頁
その人は今もいい心持で、寝台の上に熟睡の夢を結んでいるところであります。
真に忘れていた。忘れていたのがあたりまえで、これまでかつて他人のために占領された歴史のないこの寝台です。不意に自分を驚かすところのいかなる客でも、ここを占領しようとはいわない。それをこの客に限って、無作法の限りにも、許しのないうちに、早くもここをわが物にして、主人の帰ったことをさえ知らずにいる。しかもそれが妙齢の女であります。
駒井は呆れ果てて、暫くそのキャンドルを手に翳したままで、女の寝姿を見つめていました。
少なくとも眠っている間は無心でしょう。無心の時には、人間の天真が現われる。ともかくもこれは卑しい娘ではありません。金椎がかけてくれた通りに、毛布を首まで纏って、枕一杯に、濡れたように黒い後れ毛が乱れていました。
駒井はそれを、眼をはなさず見ていましたが、この時はまた別の人です。今までの野心も、熱心も、希望も、一時に冷却して、美しい娘の寝顔に注いでいる。
そうしているうちに、つくづくと浅ましさと、いじらしさの思いが、こみ上げて来るのであります。もとより狂人のいうことは取留めがない。