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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 74,962 字 · 145 頁

青空文庫

いい事を考えた。

四十六

道庵先生も、一時は米友のいないことに気がついて、周章狼狽しましたけれど、忽ちケロリとして、今日の日程のことに思い及びました。

今日は蒲焼町筋の医学館へ招かれて、講演を試みねばならない日だと考えると、こうしてはいられない。

宿の若衆を呼んで、出発の準備を命じ、自分は鏡に向って容儀を整えてみると、どうも気に入らぬのはこの頭です。

江戸を出る時は、無論、道庵の慈姑頭で出て来たが、信州へ入ってから急に気が強くなって、武者修行に出で立つべく、総髪を撫下げにした間はまだよろしいが、松本へ来て、川中島の農民が、農は国の本なりと喝破したのに感激して、佐倉宗五郎もどきの農民に額を剃り下げてしまったのは、いまさら取返しのならない失策でした。

木曾の道中は、御岳おろしが、いかにこの剃下げの顱頂部にしみ込んで、幾夜、宵寝の夢を寒からしめたことか。

よって、木曾の産物の獣の皮の一片を買込んで、うまく額のところをごまかし、余れる毛を器用に取結んで、どうやら昔の道庵並みに返り、ちょっと見たところでは、誰が見ても、細工のほどには気がつきません。