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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 頁
それが弁信法師の頭へピンと来たものですから、杖を止めてその小首をかしげたのですが、これは、虎でもなければでもありませんでした。本来、琵琶湖の湖岸には左様に猛悪な猛獣は棲んでいないのですが、そうかといって、穴熊の如きがいないという限りはない。
しかし、幸いに、穴熊でもなかったと見え、弁信が小首を傾けた瞬間に、向うがハタと眼を醒して、
「誰だい、そこへ来たのは」
と言ったのは、まごうかたなき宇治山田の米友であったのです。
紛う方なきといっても、知っているものは知っているが、知らないものは知らない。まして、弁信はまだ米友を知らず、米友はまだ弁信を知らなかったのですが、ここで初対面の二人は、存外イキの合うものがありました。
一見旧知の如しという言葉もあるが、弁信は米友を見ることができないから、一勘旧知の如しとでもいうのでしょう――こうして二人は、湖岸の古城址の間で、相対して問答をはじめました。
百三十
湖岸に於ける二人の初対面の問答を、いちいち記述することは保留し、とにかく、それから間もなく二人は、こうして真一文字に舟を湖面へ向って乗り出したのです。