輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 頁
米友は、久しく海を見ませんでした。この道中は名にし負う木曾街道でしたから、海というものを眺める機会があろうはずがない。ゆくりなく、尾張の名古屋城の天主閣へ登った時、海が見えないとは言わないが、海を見るより鈴鹿峠の山を遠く眺めて、歯ぎしりをしました。
今日只今ここに立って見ると、見ゆる限りは水です。この水は潮ならぬ海とはいうけれども、潮の有ると無いとを論ぜず、米友の眼では満目の海を眺めて舌を捲いたが、詠嘆の次に来るところのものは伊勢の海の風光でした。伊勢の海以来、米友は海を見たことがない。海を見たことがないとは言えないけれども、伊勢の海だけが、生涯のうち全く忘れがたなき海の印象として残されている。
ことにあの、大湊の一夜――あの時に、あの晩に、お君を擁護して大湊の与兵衛の舟小屋をたずねなければ、こういうことはなかったのだ。あれがああなって、ああいう義理で、あの旅の武士のために、危機を冒してあの大湊の与兵衛の舟小屋をたずねなければ――
米友は物を見ると聯想が早い。米友のは聯想が忽ち混線となる、混線がやがて無差別となる。一時はすべての若い女がみんなお君の姿に見えたことがある。