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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 頁

青空文庫

ところが、仕事はそれだけには止まらない。桶屋さんの周囲を見ると、米磨桶もあれば手桶もあり、荷桶もあれば番手桶もあり、釣瓶の壊れたのまで、ごろごろしているところを見れば、今日一日の雇いきりに限らず、当分失業問題は起らないものと見なければなりません。

お松は困ったと思ったが、どうも仕方がない――何かの機会にこの桶屋さんが、ちょっとでもこの座を立つ機会を待って素早く使命を果してしまうよりほかはないと思いました。

そこで、暫くあちらこちらさまようて、桶屋さんの動き出す隙を待っていたが、泰然として座を構えこんでしまった桶屋さんは、容易に動き出さないのです。いいかげんの時分になると、座右からかますを取り出して、カチカチと火をきって、ぷかぷかと二三ぷく煙草をのんでしまっては、さて悠々と、老木の梢の上なんぞを上目づかいでながめて、鶯がどこへ来ているか、雀が何羽止ったかという数なんぞ読んでいる様子が、お松にとっては、いよいよ小憎らしいばかりです。

そこで、遠廻りをして臥竜梅のうしろの方へ廻り、そこから桶屋さんの隙をねらって、うつろへ投げ込もうかとしましたが、気のせいか、どうもこの桶屋さんが、それとなく自分の行動を注意しているように思われないでもありません。