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だいぼさつとうげ

大菩薩峠10

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠10(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 285,635 字 · 558 頁

青空文庫

床屋が来ると、先生は従容として鏡の座に向い、何か心深く決するところがありと見え、

「エヘン」

とよそゆきの咳払いをしました。

床屋は先生の心のうちに、それほど深く決心したところがあると悟る由もありませんから、やはり、従前通りの惣髪を整理して、念入りに撫でつけて、別製の油でもつけさえすれば仕事が済むのだと、無雑作に考えて、先生の頭へ櫛を当てようとすると、

「待ってくれ――少し註文があるですからね」

と右の手を上げて、合図をしました。

ぜひなく床屋が、櫛をひかえて、先生の註文を待っていると、

「ところで、床屋様、わしは今日から百姓になりてえんだよ……武者修行はやめだ、やめだ」

と言いましたから、床屋はよくのみ込めないでいると、道庵が、

「うまく百姓にこしらえてくんな! 茨木屋のやった佐倉宗五郎というあんべえ式に、ひとつやってくんな!」

「お百姓さんのように、髪を結い直せとおっしゃるんでございますか、旦那様」

「そうだよ、すっかり百姓面に、造作をこしらえ直してもらいてえんだよ」

そこで床屋は変な顔をしてしまいました。

見たところ、相当に品格もある老人で、少々時代はあるが、塚原卜伝の生れがわりといったような人品に出来ているから、相当の敬意を以て接してみると、口の利き方がゾンザイであったり、いやに御丁寧であったりして、結局、この