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だいぼさつとうげ

大菩薩峠10

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠10(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 285,635 字 · 558 頁

青空文庫

本当に泣くと、ここでは、思うさま、誰に遠慮もなく、泣いて泣いて、泣けるだけ泣いてしまいました。

若い娘は箸のころんだのにも笑いたがると共に、葦の葉の傷めるのにも泣きたがるものです。

お雪ちゃんという子は、今まであまり泣きたがらない子でありました。それは泣くべき必要がないからでした。誰をも同じように愛し、同じように愛されている者に、泣くべき隙間の起るはずがありません。

お雪ちゃんは、その晩、改まって床に就いたのか、就かないのかわかりませんでしたが、翌朝になると、かいがいしいみなりをして、机に向って一心に物を書きはじめました。

「弁信さん――」

弁信の名は、まさしくこの娘のためには救いであるらしい。

「苦しうございます――」

と、お雪ちゃんが書き出したのは、少なくとも異例です。

「苦しうございます、あなたのおっしゃる通りの運命が、わたしの上に落ちて参りました。

穂高、乗鞍、笠ヶ岳の雪が日一日と、この白骨の温泉の上を圧して来ますように、わたくしの胸が……ああ、弁信さん、わたしは、もうトテも筆を取って物を書いているに堪えられません。

弁信さん――

どうぞ、わたしのそばに来ていて下さい。