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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠10(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 285,635 字 · 558 頁
「ちぇッ、世話を焼かせるなあ」
と兵馬が、少しじれったがりました。
「でも仕方がありませんわ、草鞋なんて、足につけたのは、今日が初めてなんですもの」
といって女は、しきりに草鞋の紐を結び直しているが、思うように結べないらしい。結んではみても、ためしてみると、足につかないで、また解きほごして、結び返しているものらしい。
当人よりも、それを見ている兵馬が、もどかしがって、二三間小戻りをして来て、昼のような月明に、当の女の足もとを篤と透かして見ました。
「そんな手つきじゃ、駄目駄目」
兵馬は、ついにうつむいて、自分の手を女の足もとにかけて、その草鞋の紐を受取ってしまいました。
「済みません」
女は手を束ねて、兵馬のなすところに信頼している。
「それ、ここをこうしてちにかけて、それから後ろで綾に組んで、前でこう結ぶのです。こんなことをしていた日には、一町も歩けば、横に曲ってしまう」
草鞋の紐を結ぶということは、あながち、先輩長者に向ってすることだけではないらしい。やんちゃな、扱いの悪い、弱者に対して、そうしなければ道が行けないためしもあるに相違ない。
兵馬は、こくめいに、この女のために草鞋の紐を結んでやりました。